現在の自動車市場を見渡すと、街を走るコンパクトカーの多くは「低燃費」「安全装備」「実用性」を追求した優等生ばかり。もちろんそれは素晴らしい進化ですが、ふと、あの「ちょっとワルそうで、最高にワクワクした四角いクルマ」が恋しくなることはありませんか?
そう、かつて日本の若者文化の真ん中にいたクルマ――トヨタ・bBです。
今回は、2016年8月に惜しまれつつも生産終了となったbBの「最終進化系」であり、今なおコアなファンを魅了し続ける2016年式「Z“煌(きらめき)”」の魅力に迫ります。
2016年という時代に、あえて「我が道」を貫いた奇跡
2016年といえば、世の中はエコカー減税やハイブリッド車の普及、自動ブレーキの義務化へと完全に舵を切っていた時代です。そんな中、bBは初代(2000年登場)から続く「四角くて、ヤンチャで、夜の街が似合う」という独自の路線を1ミリも崩さずに新車販売されていました。
時代のトレンドに媚びず、11年間にわたる2代目(QNC型)の歴史の集大成として送り出されたのが、特別仕様車である「Z“煌”」です。
エコや効率が正義とされた時代に、このギラギラとした個性を放つクルマが新車で買えたということ自体、今考えると一種の「奇跡」だったと言えるでしょう。
走るクラブハウス?「煌」の名に恥じないやりすぎな装備
「Z“煌”」の最大の特徴は、その名の通りこれでもかと奢られたメッキパーツと、執念すら感じる「光と音」へのこだわりです。
圧倒的なメッキの存在感: フロントグリル、ドアミラー、アウトサイドドアハンドルに輝くクロームメッキ。一目で「普通のbBとは違う」と分かるオーラを放っていました。
11個のスピーカーとイルミネーション: 車内に配置されたスピーカーからは重低音が響き、さらに音楽のビートに連動して青いLEDの光が明滅するギミックを搭載。
手元で操るコックピット感: アームレストにコントロールパネルが配置され、運転席に座ったまま音量やイルミネーションのモードを切り替えられる仕様は、当時の高級車やミニバン顔負けの特別感でした。
それはまさに、当時のユースカルチャーをそのまま凝縮した「走るクラブハウス」、あるいは「移動式プライベートルーム」そのものでした。
移動手段ではなく「最高の溜まり場」だった
今のコンパクトカーは「いかに快適に目的地へ移動するか」を競っていますが、bBが提案したのは「目的地に着いてから、車内でどう楽しむか」という真逆の価値観でした。
フロントシートが深く沈み込み、外からの視線を遮る「まったりモード機能」は、若者たちにとって「実家から一番近い、誰にも邪魔されない秘密基地」を提供してくれました。
スマホが普及し、音楽の聴き方が変わりゆく過渡期にあっても、bBの車内だけはいつもお気に入りの重低音と、仲間たちの笑い声で満たされていたのです。
まとめ:効率主義の今だからこそ、あの「尖り」が愛おしい
2016年8月、bBはその長い歴史に幕を閉じ、後継の実用的なトールワゴンへとバトンを渡しました。
生産終了から時が流れた今、2016年式のbB「Z“煌”」を中古車市場や街中で見かけると、どこかノスタルジックで、それでいて強烈に新鮮な印象を受けます。それはきっと、現在のクルマたちが失ってしまった「理屈抜きのカッコよさ」や「遊び心」が、あの四角いボディにギッシリと詰まっているからではないでしょうか。
効率やコスパも大事。だけど、あの頃僕たちがクルマに求めていた「胸の高鳴り」を、bBは今も色褪せずに教えてくれるのです。
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